暑くてムシムシする日本の夏。
私たちは、風が吹くと家の軒先から聞こえてくる「風鈴」の涼やかな音色に、癒されてきました。
2020年東京オリンピック・パラリンピックを前に、「風鈴」のような東京の伝統的な工芸品にも注目が集まっています。
そこで、江戸時代からの風鈴づくりの技術を今に伝える「江戸風鈴」の老舗、江戸川区にある「篠原風鈴本舗」さんを取材してきました!
2回目の今回は「江戸風鈴」の作り方と魅力についてお伝えしたいと思います。
一般的な「風鈴」と「江戸風鈴」の違いは?
ガラスでできた風鈴は全国にありますが、現在、「江戸風鈴」を製造している工房は「篠原風鈴本舗」と「篠原まるよし風鈴」の2か所のみです。
「篠原風鈴本舗」は、儀治氏の父である初代又平(またへい)氏が大正4年に創業。
二代目を継いだ儀治氏が、昭和39~40年頃に「江戸風鈴」と名付け、商標登録しました。つまり「江戸風鈴」は儀治氏のブランド名なのです。
江戸風鈴の特徴は3つ。
●ガラス製の風鈴で、型を使わない宙吹きで成形していること
●風鈴のふちをわざとギザギザに仕上げ、音の響きをよくしている
●風鈴の内側から絵付けするので、雨風ではがれにくく、絵が長持ち
現在も、江戸時代からの技術を守るものだけが「江戸風鈴」を名乗れるのです。
厄除けの名残りとして赤く塗られた「風鈴」
「江戸風鈴」の伝統的な色は写真のように真っ赤に塗られたもの。
赤には、古来より魔除けの効果があるといわれていました。
もともと風鈴は、邪気を退けるものとしてお寺の軒先につるされた「風鐸(ふうたく)」が起原。
音が聞こえる範囲は「聖域」として、災いを避けることができると信じられてきました。
このため、伝統的な風鈴には赤が使われたのだそうです。神社の鳥居がよく「赤(朱赤)」で塗られているのも同じ意味なんですね。
そして描かれている絵にも注目!
実は江戸っ子らしい「粋」な言葉遊びが秘められているんです。
例えば上の写真の「千両」と描かれた絵の反対側には「白いカブ」が描かれています。
この「カブ」はおいちょかぶ(花札を使ったカードゲーム)の最高得点である「9(=カブ)」にちなんでいます。
「かけ事に買ってお金を得る」につながる、おめでたい柄というわけですね。
また、「松」の絵柄の反対側は「宝船」。つまり「宝船をまつ」という言葉遊びです。
時代の流れとともに、色が「暑苦しい」と敬遠されるようになってしまった「赤い風鈴」ですが、長寿のお祝いにぴったり!
家族や親せき一同で、屋形船を貸切って還暦や古希、喜寿、傘寿、米寿など、人生の節目をみんなで祝う方もたくさんいらっしゃいます。
その時は、ぜひ「赤いちゃんちゃんこ」ではなく「赤い縁起物の風鈴」をプレゼントしてみてはいかがでしょうか?
懐かしい音色を響かせる「風鈴」はとても喜ばれるはずです。
篠原風鈴本舗の「江戸風鈴」はどうやってつくられている?
「江戸風鈴」はどのようにつくられているのでしょうか?
今回取材に対応してくださった篠原風鈴本舗・社長の篠原恵美さんに、工房へとご案内いただきました!
工房には1,320℃前後の温度に温められた炉があります。
この中に「坩堝(るつぼ)」が埋め込んであり、その中でガラスが溶けているというわけです。
この坩堝の中にともざお(細いガラス棒)を入れ、1円玉ぐらいの大きさに溶けたガラスを巻き取ります。
ともざおの先に付いた小さな玉を「口玉」と呼んでるそうです。
この口玉の上にもう一度、溶けたガラスを巻き付けた後、少し口で吹いて膨らませ、針金で小さな穴を開けます。
これが、後で風鈴を吊るす糸を通す穴になります。
その後、型を使わず、一息で膨らませて整形。
この方法を「宙吹き(ちゅうぶき)」といい、江戸風鈴はすべてこの方法でつくられます。
膨らませた風鈴をともざおから切り離して、冷まします。だいたい20分ぐらいすると手で触れるようになるそうです。
最後の仕上げとして、かるくふちをこすりますが、鳴り口にはギザギザを残すように。
コップのように滑らかに仕上げてしまうと、すべって音がしなくなってしまうそうです。
滑らかに仕上げた風鈴を鳴らしてくださいましたが、本当に音が響かなくてびっくり!
出来上がった「江戸風鈴」を、職人さんが一つ一つ鳴らしてくださいました。
どの風鈴も少しずつ音色が違います!
「江戸風鈴は職人の手作りであり、型を使って整形するものではありません。したがって、厚みもサイズも形も一つ一つが微妙に異なり、それぞれが独自の音色を奏でます」と篠原さん。
その違いが江戸風鈴の魅力なんですね!
ちなみに風鈴のサイズが大きいと「低い音」に。
ガラスの厚みがあると「高い音」になるそうですよ!
ぜひ、好みの音を探してみてくださいね。
次回3回目は風鈴の絵付けや人気の柄、最新の柄などを一挙ご紹介。お楽しみに!
■取材協力
篠原風鈴本舗
東京都江戸川区南篠崎町4-22-5
問合せ先:03-3670-2512
営業時間:9時~18時(12時~13時は昼休憩)、日祝休み
※イベント等のお知らせはFacebookで確認してください。
◆江戸風鈴の見学・制作体験可能【要予約】
繁忙期(7月~9月上旬)をのぞき、見学可能です。
工房見学並びに制作体験希望の場合は、必ず電話でお問合せ頂いた上でご予約ください(日曜・祝日はお休み)。
▼ 江戸風鈴制作体験・見学をしたら江戸川から屋形船に乗ろう!
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