東京の屋形船で出されるお料理のメインは、お刺身と天ぷらです。どちらも旬の食材を築地から仕入れていて、特に天ぷらは船内で揚げたてを頂くことができます。
この天ぷらは江戸前天ぷらと呼ばれる江戸料理の一種で、江戸時代からの伝統的な味を楽しむことができます。江戸料理とは江戸時代に発達した江戸独自の料理文化で、今日の和食の原型と言われています。その中でも代表的なものが寿司、そば、そして江戸前天ぷらです。
江戸前天ぷらとは如何様な食べ物なのでしょうか?
天ぷらは日本のものではなかった
天ぷらは日本古来の料理ではなく、今から約400年前(16世紀の中頃)鉄砲の伝来とともにポルトガルから長崎に伝わった南蛮料理です。天ぷらの語源には諸説ありますが、ポルトガル語で調理を意味する「テンペロ」が語源とする説が、現在有力視されています。
当時の日本では油は灯火用の大変貴重なものだったため、調理に大量の油を使用する天ぷらは高級品として扱われていました。江戸時代に入り、油が簡単に入手できるようになったことで天ぷらの立ち位置も変わっていきます。
庶民のおやつ
明暦の大火(1657)後の復興過程で、江戸の町には様々な屋台が登場しました。特に防災都市化する過程で各地に設けられた火除地は広小路と呼ばれて盛り場に発展し、飲食店が軒を連ねました。
その屋台の商品の一つとして「すし」「そば」「田楽」「蒲焼き」などとともに売られるようになったのが、「天ぷら」でした。
当時は立ち食い屋台で、ファーストフードのような感覚で食べられていたようです。安くてカロリーの高い天ぷらは庶民の強い味方でした。
関西風と関東風
天ぷらにも関東風と関西風があります。
関東風の天ぷらは、卵を入れた衣を胡麻油で揚げたもので、こんがりキツネ色に仕上がるのが特徴です。
一方関西風の天ぷらは卵を入れない衣をサラダ油で揚げたもので、白い天ぷらが特徴です。
もともと関東では江戸前でとれた魚を天ぷらにしていたので、魚の臭みをとるために胡麻油で揚げるようになったと言われています。一方関西では野菜中心であったため、自然の味を生かすため天つゆではなく食塩をつけて食べるようになったと言われています。
天ぷらひとつとっても関西と関東の違いが見て取れておもしろいです。
いかがでしたか?天ぷらというと料亭で食べる高級なものというイメージがありますが、江戸時代の人たちにとっては非常に身近な食べ物だったのです。
現在広く普及しているのはサラダ油であげる関西風の天ぷらなので、ごま油であげる江戸前天ぷらを食べる機会は少なくなってきています。中には、今でもごま油で揚げる江戸本来の製法で調理をしている屋形船も…!
東京の屋形船はその日のうちに築地で仕入れた江戸前の食材を使ったお料理の数々をいただくことができます。是非屋形船に乗る際には、江戸前の新鮮食材を味わってめしあがってくださいね!